小説 カブールの園 感想

小説 カブールの園 感想映画

本記事は、【2023.7.6】にシティヘブンネットの写メ日記に掲載された「小説 カブールの園」のネタバレ感想または考察を再掲したものです。

著者:宮内悠介
出版社 ‏ : ‎ 文藝春秋(初版2017年1月)

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カブールの園 文庫版装幀

普段は映画のことばかりですが、数年ぶりに新しい小説を読んだらとても楽しかったので書きます。

物語というか、マジックリアリズム的な描写に特徴のある小説のためネタバレというほどのこともないのですが、一応気になる方のために以下本編情報に触れます。

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ふとした瞬間に小学生の頃のいじめの記憶がフラッシュバックしてしまうため、VRの治療をうけている、という設定です。
VR内で”実際に起こっている”こともあるため、読んでいると、サンフランシスコでの実生活と陰鬱な豚の記憶が交互に、ときおり混ざりながら降ってきます。

現実と、記憶が奇妙にまざりあって、不思議なビジョンになってしまうことは皆さんも経験があるんじゃないでしょうか。わたしにはあります。

いつも通るセブンイレブンの看板を、しっかり”見て”歩くことはありません。記憶でうろ覚えのセブンイレブンの看板は、微妙に湾曲し幅が違うはずです。ジョルジュキリコの絵のように。だけど、実際に街をあるくときは、わたしは本当の看板をわざわざ見たりしません。わたしは、現実の町のなかで湾曲した看板の下を歩いて生きています。

わたしの場合、日頃より人体が破損したり大量に血が出るエッチな映画を見すぎているため、お仕事でホテルに行った際も、ふと集中を欠くと変なものが見えます。
例えば、ホテルのエレベーターから血が津波のように吹き出したり、目の前で触れている人間が孤独に飲まれ、ゆっくりと実体を失ってベッドの上の黒いシミになったり、手の中の男性器から血が止まらなくなってしまったり、壁のゴッホのレプリカに「ART」と血文字が重なったり。

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津波のように血が噴き出す

これらのビジョンは、「存在しない幻」ではなく、現実と薄く重なり、今のわたしにとって確実に起きていることともいえます。わたしの手の中で、肌色を残して健康的な男性器と、いつか映画でみたかもしれない、血まみれのソレとは同時に確かに存在しています。

ほんとうは”日常のたくましいイマジネーション”と”現実の記憶”はそんなに差がなく、わたしたちはいつもどこかがズレた世界を生きています。少なくとも、わたしはそう思っています。

だから、それらのズレた世界に目をつぶることなく、繊細に描きだそうとしてくれている小説を読むととても癒されます。「カブールの園」はわたしにとっては、癒される小説でした。
イマジネーションの中で死んでしまったり閉じ込められてしまったものたちに、手を差し伸べて、救い出しにいこうとしているところも、とてもかっこよかったな。
短い小説で、すぐに読めるので、気になる方は是非、読んでみてね。


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みんな、もうダイナソー・ファイターはみたかな?素手で恐竜倒す、インディペンデントカンフーSF映画だよ🦕🦕🦕
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