この記事では映画「やわらかい手」(原題:IrinaPalm) のネタバレ感想または考察について書きました。
映画「やわらかい手」(原題:IrinaPalm) とは
監督: サム・ガルバルスキ キャスト:マリアンヌ・フェイスフル 2006年製作/103分/R15+/イギリス・フランス・ベルギー・ドイツ・ルクセンブルク合作 原題:Irina Palm 配給:クレストインターナショナル 劇場公開日:2007年12月8日
映画「やわらかい手」(原題:IrinaPalm) 感想ータフに生きていけたら
お正月、自宅に友人(Twitter映画仲間のはんとうさん)を招き、映画3本鑑賞会をした2本目です。
感想を書くのに1カ月もかかってしまった。
かねてより「風俗嬢が死ぬ/死なない」に並々ならぬ関心をもち(死ぬから悪い、死なないから良い、ということでもないのが難儀なところ)風俗嬢キルカウントおよびアンキルカウントをしています。
この、映画「やわらかい手」は約10年ぶりの鑑賞でした。
当時、ナイトワークを始めたばかりだったわたしは、ホラー映画や普通のドラマ映画のなかで、性産業に手を染めたものが特別簡単に殺されるような気がしてやきもきしていました。そもそも”人の命が空気より軽く誰でも惨殺される映画”なら気にも留めなかったかもしれないけど、そうでない映画でも割と死んでると思ったんですよね。ジャッロのオープニングアクト的に殺されたりね。
若かったので「性産業に手を染めた私の命は社会的にこんなにも軽いのか」と傷ついたりもしていました。
そういう経緯で、風俗嬢がテーマになっていながらあまり人が死なずにドラマが展開する映画を調べては観たりを繰り返していた中で出会った映画でした(末尾にリストつけます)
ざっくりあらすじ🔻
主人公のマギーは、孫が難病で手術をしなくては余命わずかという瀬戸際、稼ぎの少ない息子夫婦を見かねて性産業へ乗り出します。自身のことを「何もできないおばさん」という風に捉えていたマギーは、風俗店の中で生きる人々やお金と付き合う中で少しずつ自分への見方が変わり、自信をつけていきます。
あらすじ自体はハートウォーミングですが、性産業に対する田舎の風当たりの強さや男女の捉え方の違いがマジでリアルで刺さる人にはかなり刺さって血がでると思います。
稼げない息子に代わって孫の治療費を稼いだのに、風俗バレしたあとに息子から「穢れた金」と罵られるシーンとか、リアリティもあり、10年前に見たときはかなりキツくてちょっと吐くかと思ったのですが、10年経った今となっては、なんだか甘酸っぱい切ない気持ちで鑑賞しました。
どっちかというと「そんな時代もあったな」です。気にしなくなってしまった。頭ごなしにそんなことを言うやつは家族だろうと猟銃で撃っていいと思います。
そんなヤバい息子との喧嘩を乗り越えてなお、孫を助けるマギーがタフに選択していくのもドラマの見どころです
この映画の中ですごく好きなのは、マギーが少しずつ綺麗になっていくところと、孫に玩具を買ってあげるスーパーでのシーンです。今までは値段を見ていたマギーが、値段を観ずに玩具を買うんですよね。染みるわぁ。お金が切迫したものから、”選択肢”に変わっていくところ!痺れる!
初めて足を踏み入れた時の『殺されるんじゃないか』というドキドキしている感じもすごく良かったし、震える手で接客しているところから、だんだん片手間にリラックスして接客するようになったり、握りすぎて腱鞘炎になるのも微笑ましくてグっときました。
エンディングは少し恋愛ドラマも絡むので「ちょっとそれはどうなのよ!」と賛否両論かと思いますが、結局「欲しいものを欲しいと言えるようになった」というドラマかと思うとわたしはアリです。わたしもマギーのようにウルトラタフに生きていきたいな。
風俗嬢が死なない映画リスト
①”風俗嬢である”ということが原因で死んでない
②”風俗嬢”が精神病者として描かれていない
③性産業へのリアリティがある
という3点を満たすものをリストアップしました。一部趣味でホラー映画と日活が混ざっています。
※上からオススメ順です。
- やわらかい手(2006/イギリス他)
- 暗闇から手を伸ばせ(2013/日本)
- ダークグラス(2022/イタリア)
- ハスラーズ(2019/アメリカ)
- 赤線地帯(1956/日本)
- ラスト・ナイト・イン・ソーホー(2021/イギリス)
- マル秘色情メス市場(1974/日本)